2025.05.27
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「栄養ドリンクのイメージを変える必要がある」 ―プレミアム市場を狙うすべてのブランドの大きな課題―

「栄養ドリンクのイメージを変える必要がある」 ―プレミアム市場を狙うすべてのブランドの大きな課題―

Positioning Magazine.2025.5.11

ニールセン(Nielsen)のデータによれば、2024年1月から10月までのタイのノンアルコール飲料RTD(Ready-to-Drink)市場の売上は1,980億バーツに達し、前年同期比で7.4%の成長を記録している。ところが、​タイのエネルギードリンク市場は、近年成長率の鈍化が見られる。依然として大きな規模を持つ一方で、社会的イメージという課題に直面している。とくにプレミアム化や若年層ターゲットの路線においては、商品設計・ブランド再構築・流通チャネル戦略の再検討が必要である。

タイ工業省工業経済事務局のデータによると、エナジードリンクの稼働率は大きく低下している。2021年から2024年にかけて、指数は59.05→23.35へと約60%下落している。特に2023年から2024年の1年間での落ち込みは、約40%減少している(39.20→23.35)ことが分かった。

タイにおける「栄養ドリンク」は、「エナジードリンク(Energy Drink)」として若者層に向けたイメージチェンジが図られている。もともと労働者向けというイメージを改善し、新たな市場を開拓して利益を拡大しようと、メーカー各社は何年も前からこの試みに取り組んできた。しかし、いわゆる「プレミアム市場」と呼ばれるこのセグメントが本格的に始めたのは、まさに今の時期かもしれない。

「エナジードリンクは健康に悪い、飲むと動悸がする、イメージが良くない、飲むならこっそりとという固定観念を変えるのは非常に難しいが、私たちはそれを改善しようと努力している」と、タイのRed Bullブランドを擁するTCPグループの最高経営責任者(CEO)、サラウット・ユウウィッタヤー氏は述べた。

彼はまた、「エナジードリンクが“労働者向けの飲み物”として認識されている国は、おそらく世界でタイだけではないか」とも指摘している。重労働をしたときや長距離運転の際など、限定的な場面でしか飲まれないのが現状である。

一方、他国ではエナジードリンクは一般的な飲み物として広く受け入れられており、飲まれるシーンも多岐にわたる。たとえば、パーティーの場、試験勉強中、残業時などで、こうした背景により、タイ以外の国ではこのカテゴリーの成長がタイよりも良好だといえるのである。

さらに、海外ではエナジードリンクがあらゆる階層の人々に浸透しているため、マーケティングでは「ブランド力」での競争が主になる。これに対してタイでは、「価格」が最も重要な要素であり、消費者は価格に非常に敏感である。たった2バーツの値上げでも売上が急減してしまうため、タイ国内でのエナジードリンク販売は利益率が非常に低くなっている。

「栄養ドリンク」から「エナジードリンク」へ

このような市場の状況は今に始まったことではなく、10年以上前から続いている。しかし、プレミアムエナジードリンクの「イメージチェンジ」は常に進化してきた。たとえば、従来の茶色いガラス瓶をやめて透明なボトルを使用するようになったり、炭酸を加えるために缶入りに変更されたりしている。また、名称も刷新され、「滋養強壮ドリンク」や「パワードリンク」、さらには「エナジードリンク(Energy Drink)」と呼ばれるようになり、これまでのイメージを完全に一新しようとしてきた。

プレミアムエナジードリンク市場はまだ非常に小さい。 TCPは2022年に、200億バーツ規模のエナジードリンク市場のうち、プレミアムセグメントはわずか20億バーツで、この市場は年間わずか10%程度で成長していると報告した。また、エナジードリンクのイメージも良い方向へと変化しつつある兆しが見られ、若者がこのタイプのドリンクを手にした自分の写真を自信を持ってSNSに投稿するようになってきていることからも、それがうかがえる。

Photo by Nattaporn, Tokyo SME Support Center