2025.06.20
Thai Local News

バンコクを揺るがした地震、高層・老朽ビルからの移転を希望する企業が続出 ―CBREによると、テナントは低層階やロウライズビルに関心を寄せているー

バンコクを揺るがした地震、高層・老朽ビルからの移転を希望する企業が続出 ―CBREによると、テナントは低層階やロウライズビルに関心を寄せているー

The Standard.2025.05.29

不動産コンサルティング会社のCBREタイランドによると、3月28日にミャンマーで発生した地震は、その揺れがバンコク全域で感じられたことで、企業各社にとってオフィス移転を急いで検討する“触媒”となった。特に、影響を受けた老朽化した建物からの移転が進められている。

地震後のオフィスビル市場に影響を与える3つの主な要因

第一に、「構造の安全性」
テナントにとって最も重要な関心事は「建物の構造的な安全性」であり、これは現在入居している企業だけでなく、新たに物件を探している企業にも共通している。
現在のテナントが最も重視するのは、ビルオーナーが建物の構造検査を丁寧に実施し、その結果を通じて「バンコク都の基準に則った安全性が確認された」と明言できることである。

第二に、「質の高い情報提供」
ビルオーナーからの迅速で明確、簡潔な情報提供は非常に重要。テナントは、地震などの緊急時において、多様なチャネルを通じてタイムリーに更新情報が提供されることを期待している。また、地震時に取るべき行動をまとめたガイドラインの作成も求められている。
実際、地震発生後には多くのビルオーナーが優れた対応を見せ、建物専用アプリ、デジタルサイネージ、SNS、メールなどを活用してテナントに確実な情報を届け、対応の信頼性を高めている。

第三に、「オフィススペースに対する需要の変化」
長年同じビルに入居していた企業が、移転を真剣に検討し始めている。特に、地震発生以降、新しいオフィスを探していた企業の一部は、高層ビルの低層階やロウライズ型の建物への関心を示すようになった。CBREによると、地震の影響を受けた古いビルからの移転を検討する企業が明らかに増えてきているとのことである。

全体として、バンコクのオフィスビルの多くは、構造の強度と耐久性を示している。しかしながら、迅速に安全性への信頼を提供し、テナントに対して明確な情報を発信し、必要な修繕を迅速に行うビルのオーナーは、市場においてその建物の存在感と競争力を一層際立たせることができる。

「安全性」が「品質」を示すうえで最も重要な要素となった今、CBREは、今回の地震をきっかけに、バンコクのオフィスビル市場において「高品質な建物へのオフィス移転」の傾向がさらに加速すると予測している。

地震後の建物検査結果及び検査後の対応方針

内務省公共土木・都市計画局

内務省公共土木・都市計画局は、タイ工学会、タイ工学協会、建築検査官協会、および民間部門のボランティア技術者と連携し、被害の報告があった建物の検査を実施した。2025年3月28日から4月22日までの間に実施された、地震による被害を受けた官公庁の建物に対する検査の結果、バンコク都および地方を合わせて、合計9,655棟の建物が対象となった。使用に支障がない「緑」判定を受けた建物は9,098棟、中程度の損傷があるが使用可能な「黄」判定は484棟、そして構造に重大な損傷があり使用停止命令が出された「赤」判定の建物は73棟でした。

なお、当局は、地震の影響を受けた建物の初期的な構造状態に応じた色分け基準および、建物検査後の対応について、以下のように周知・説明を行った。

建物の色分け基準と対応指針(地震の影響を受けた建物)

🟩 緑色(使用可能)

  • 初期検査による建物の構造状態:建物の構造には軽微な損傷、または損傷が確認されない状態。
  • 建物使用に関する助言:通常通り使用可能。
  • 検査後の対応指針:建物所有者は、今後の変化に注意を払い、状態の悪化や危険の兆候が見られた場合は、速やかに該当機関の管理担当者に報告し、専門の技術者による再検査を依頼すること。

🟨 黄色(注意して使用可能)

  • 初期検査による建物の構造状態:建物の構造に中程度の損傷があり、建物の部材や構成要素から落下物などの危険があるが、使用は可能。
  • 建物使用に関する助言:一部または全体の使用が可能だが、今後、詳細な構造検査を再度実施する必要がある。
  • 検査後の対応指針:建物所有者は、専門の技術者(構造エンジニア)による詳細な損傷調査を実施し、建物の安全性を確認した上で、適切な修繕方法を計画・実施すること。

🟥 赤色(使用禁止)

  • 初期検査による建物の構造状態:建物の構造に重大な損傷があり、安全に使用できない状態。
  • 建物使用に関する助言:使用禁止。
  • 検査後の対応指針:建物への立ち入りは、権限を持つ当局の文書による許可が必要。また、専門の技術者による詳細な損傷調査を実施し、適切な修繕方法を確定した上で、安全が確認されるまで使用を再開しないこと。

 

Photo by Sean Pollock on Unsplash