寿司はタイ人に大人気のナンバーワンメニュー ―回転寿司、手巻き寿司、おまかせ、ビュッフェ、どれも好まれているー

PPTV Wealth.2025.05.29
2025年の「タイにおける日本食のトレンド」について言えば、寿司、刺身、ラーメン、しゃぶしゃぶ、焼肉、そして様々なご飯料理に至るまで、多くのタイ人が日常生活で選ぶ食文化の一部となるまで、日本食はタイの消費者の心を掴み続けるであろう。この人気は、ソーシャルメディアにおける多数の言及 (Mention)やエンゲージメント (Engagement)に反映されており、消費者の人気とタイにおける日本食市場の成長を示している。
データセット株式会社による調査では、2025年4月22日から5月21日の期間中、ソーシャルリスニングツール「DXT360」を通じて、ソーシャルメディア上の消費者の声を収集・分析し、タイにおける「日本食トレンド」に関するインサイトを、人気度やタイ人の日本食消費行動の観点から明らかにした。
- 「寿司」は、伝統的な寿司とフュージョン寿司の両方を含む多様な味と食材、そしてアラカルト、回転寿司、手巻き寿司、おまかせ寿司、ビュッフェなどの多様な食事体験により、50.2%のエンゲージメントを獲得して1位になった。
- 「定食」は、23.7%のエンゲージメントを獲得した。日本式のセットメニューである定食は、通常、ご飯、味噌汁、主菜、副菜で構成されており、栄養バランスを重視している点が特徴である。そのため、消費者にとって選ばれやすい食事スタイルとなっている。
- 「焼肉」 は、10.4%のエンゲージメントを獲得した。日本式の炭火焼きスタイルにより、炭の香ばしさと、調味料を加えない素材本来の味わいが楽しめるのが魅力である。特別な機会や大切な人との食事として選ばれることが多く、一人で来店する場合にも、インドア派に適したカウンター席を設けた店舗もある。
- 「しゃぶしゃぶ」 も、10.4%のエンゲージメントを記録した。しゃぶしゃぶは鍋料理の一種で、熱々のスープに好みの具材を自分でしゃぶしゃぶと湯通しして楽しむスタイルが人気。一緒に食事する人とのコミュニケーションや共同作業のような感覚も味わえるため、多くの人のお気に入りのメニューとなっている。
- 「ラーメン」 は、3.3%のエンゲージメントを獲得した。ラーメンは、香り高いスープと日本各地の地域ごとの味付けが楽しめる日本の麺料理である。さらに、タイ人の好みに合わせたフュージョンスタイルの味付けも取り入れられており、その点が人気の理由となっている。
- 「カレーライス、トンカツ、天ぷら」 は、合計で2%のエンゲージメントを獲得した。これらは、サクサクとした揚げ物が好きな人や、スパイスの香りが楽しめる日本のカレーを好む人に人気のある日本食カテゴリーのひとつである。
いくらなら買いたい?顧客が納得して支払う価格帯
価格帯の観点から日本食全体を俯瞰すると、1人あたり1食251〜500バーツの価格帯が最も高いエンゲージメント率40.9%を記録した。次いで、101〜250バーツが33.2%、501〜1,000バーツが23.9%、1,000バーツ以上は2.0%となっている。
- 「寿司」では、251〜500バーツの価格帯がエンゲージメント率60.8%と最も高く、価格・食材の品質・食体験のバランスが良く、アクセスしやすい価格帯であることが伺える。
- 「定食」では、101〜250バーツの価格帯がエンゲージメント率92.8%と圧倒的で、日常の食事としてのニーズを満たしていることが示されている。
- 「焼肉・しゃぶしゃぶ」では、501〜1,000バーツの価格帯が主流で、焼肉が65.1%、しゃぶしゃぶが56.6%のエンゲージメントを獲得しており、特別な食事や重要な食事シーンにおける人気メニューであることが明らかである。
料理の質と味にこだわる
また、ソーシャルメディア上で「日本食」について話題に上がる際、最も重視されたのは「料理の質と味」で、言及数は46.5%と非常に高いことが分かった。消費者が同等に重視し、2番目に多く言及されたのは「価格」で、言及数は42.3%に達した。
ソーシャルメディアで頻繁に登場し、話題になったもう一つのキーワードは、「シェフが日本人」や「レストランのオーナーが日本人」で、タイ人消費者にとって料理の真正性を保証する重要なセールスポイントとなり、言及数は11.2%でした。
ネット上で日本食レストランに関する意見や議論を調査したところ、多くの人が知っている有名チェーン店に加え、日本人シェフが自ら調理したり、日本人オーナーが品質管理を徹底していることで、消費者の注目を集めている中小規模の日本食レストランも数多く存在することが分かった。
特に手巻き寿司やおまかせ寿司といったジャンルにおいては、消費者が味や価格だけでなく、「日本の本場のレシピに近い体験」を求めていることが伺える。
「本場の日本人」はマーケティング上のキーワードとなっている
シェフやオーナーが「本場の日本人」であることを明示することは、消費者の信頼感を高めるマーケティング戦略となっている。また、本場の日本食を体験しているという実感を顧客に与え、消費者の視点から食事の価値を高める。つまり、「日本人シェフ・オーナー」という言葉は、料理の質を支える人物であるだけでなく、競争の激しいタイの日本食レストラン業界において、差別化を図る「心理的シンボル」でもあるのである。
タイ飲食業の現状:コロナ以上の危機
Marketing Oops!.2025.06.07
日本食の人気が高まっている一方、現在のタイ国内におけるレストラン業界の状況が悪化している。ミシュランの星を獲得したレストランのオーナーである「シェフ・トン」ティティット・タサナカジョーン氏によるとタイの飲食業、とりわけモダンタイ料理を専門とするレストランやファインダイニング(高級料理店)が以下のような複数の要因により「コロナ禍以上の危機」に直面している。
- 消費力が40%以上激減
2025年第1四半期には、タイ人の購買力が原状より40%以上減少し、消費者は外食より節約を優先する傾向に。
- コスト急増
賃料はパンデミック前より20%上昇。
原材料費は35%増。
最低賃金は1日400バーツと上昇しており、人件費も拡大。
- 観光客の減少・インバウンド不振
特に中国人観光客の激減が大打撃。バンコクの観光エリアでは、かつて15,000–30,000人/日の来客が2,000–5,000人に激減。
- コロナよりも長期化・深刻化
タイの飲食業が「コロナ禍以上の危機」に直面していることは、「一時的ショック」ではなく「構造的な低迷」へと移行しているためである。コロナ時代は政府の補助金や猶予措置があったが、現在はそれらも終了。
これらの影響により、質の高い料理や体験を提供してきた店舗であっても、厳しい経営判断やビジネスモデルの見直しを迫られている状況である。
Photo by Bladimir Garcia on Unsplash