2026年のタイ消費者動向 「AI・インフルエンサー・ウェルネス」— 購買意思決定を後押しする力
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2026年、タイの消費市場は大きな転換点を迎えている。AI を中心としたテクノロジーが生活のあらゆる場面に浸透し、消費者の購買行動に直接影響を与え始めた。一方で、小売・飲食・キャラクターコラボといった領域では、新しい体験価値を求めるニーズが拡大し、市場が活性化している。
本記事では、テクノロジー、インフルエンサー、小売、飲食、ポップカルチャーなど複数の側面から、2026年のタイ消費者動向を読み解く。
AIが購買行動の「第一相談相手」に
セントラルパタナ(Central Pattana)社マーケティング部門最高経営責任者(MD)ナッタキット・タンプーンサンタナ氏は次のように述べている。
2026年の消費者トレンドは、大きな転換点を迎えており、商品やサービスの購買意思決定のあらゆる場面にテクノロジーが深く関与するようになる。特に AI(人工知能) は、消費者にとって「新たなアシスタント」として本格的な役割を果たし始めている。
商品の検索方法や比較行動は大きく変化しており、多くの消費者が「購入前にまずAIに尋ねる」ようになってきている。たとえば、何を買うべきか、どのブランドがコストパフォーマンスが良いか、自分に最適なプロモーションは何かといった質問から、旅行計画や日常の買い物に至るまで、AIが相談相手となっている。これにより、AIはカスタマージャーニーにおける重要な媒介者となりつつあり、近い将来、あらゆる購買行動の出発点となる可能性が高まっている。
インフルエンサーの影響力は依然強く、アジア市場で継続へ
AIの役割が急速に拡大しているとはいえ、アジアやタイの文脈では、インフルエンサーが依然として消費者の関心を喚起し、信念形成に影響を与える強い力を持っている。特に、人格・信頼性・フォロワーとの関係性を重視する社会においては、インフルエンサーが話題づくりや認知拡大の主要な原動力であり、ブランドや商品の成功を後押しする重要な存在であり続けている。この影響力は、今後 少なくとも1〜2年はアジア市場で継続すると予測されている。
小売市場は「体験価値」で競争が過熱
タイの小売業界は競争が非常に激しく、常に改善を求められている。その中でも「体験価値の創出」が極めて重要となっている。タイの小売ビジネスは、この体験価値づくりに高い専門性を持ち、価値を生み出す主要な要素として位置づけられている。タイの事業者は、新しいもの・新しい体験をいかに顧客に提供するかをめぐって激しく競い合っており、その結果、市場全体で体験型の取り組みが高度に発展している。
ショッピングセンターは、買い物だけでなく、より多様なサービスを提供する必要がある。例えば、パスポート申請・更新サービス、身分証(IDカード)の更新手続きを館内で行えるようにするなど、生活利便性を高めるサービスの導入が求められている。例えば、MBKではタイ人はパスポート更新などの手続きができる。最近、One Bangkokの中にはBOIのOne Stop Service Centerがあり、ビザの更新ができるようになっている。また、施設の改装スピードも以前より速くなっている。大型ショッピングセンターでは、リノベーションの周期が従来の約20年から、現在は6〜10年程度へと短縮 されており、競争力維持のために継続的なアップデートが行われている。
飲料・デザート市場が躍進―成長率12%で飲食を牽引
ソラテープ・ロートポジャナラット氏、タイ飲食事業者協会会長、タイホステル協会名誉顧問は次のように述べている。
今年、タイの飲食市場において飲料・デザート分野は依然として最も目立つセクターであり、
来年も成長が見込まれている。一方で、全体としては購買力の回復が十分ではなく、多くの種類のレストランが依然として伸び悩んでいる状況にある。しかし、タピオカミルクティー、フルーツティー、スペシャルティコーヒー、ベーカリー、アイスクリームといったカテゴリーは逆風をものともせず成長しており、平均成長率は約12%と、その他の飲食業種よりも明らかに高い水準を示している。
流行の鍵は「高速メニュー開発」と「体験価値」
この市場が継続的に活況を呈している主な要因は、事業者が高速で新メニューを開発し、トレンドを即座に取り込める能力にある。特別レシピのタピオカミルクティー、多彩なフルーツティー、ドリップコーヒー、さらには毎月のように登場する季節限定メニューなど、常に新商品が投入されることで、消費者は「新しいものを試したい」という気持ちが継続し、リピート購入につながる。これは、新メニュー開発に時間がかかりがちな一般的なレストラン業態とは対照的である。
飲料・デザートビジネスの成長を後押ししているもう一つの強みは、「1杯・1個の商品」ではなく 「体験」を販売している点である。多くの消費者は、店内の雰囲気、写真映えするスポット、カップやパッケージデザイン、ブランドのストーリーといった「体験価値」に対して喜んで支払う。これらすべてが付加価値となり、飲料カテゴリーの商品は価格を高めに設定しても消費者が受け入れやすいという特徴を生み出している。
コストの面でも、飲料・デザートビジネスは主食系レストランより管理しやすい。原材料の多くは長期保存が可能で、市場価格に応じてレシピ調整もしやすく、さらに ホットキッチン(加熱調理場)や大量の人員を必要としない。そのため、1杯あたりの原価が比較的安定しており、1ユニット当たりの利益率も他の飲食カテゴリーより明らかに高いという特徴がある。
消費者が「新しさ」を重視する行動も、この市場拡大を後押しする大きな要因となっている。飲料やデザートは 「半分ファッションのような商品」と捉えられ、消費者は話題の新メニューを試したい、SNSに投稿したい、あるいは日常のライフスタイルの一部として購入する。さらに1杯あたりの価格が手頃で試しやすいことも、新商品を次々と試そうという消費行動を支えている。
健康志向と日本トレンドの影響が増大
YAKINIKU LIKE Thailand のマーケティングマネージャー、ティップスダー・アネークワチャラーコン氏は次のように述べている。
日本からのトレンドは、これまで通りタイ人消費者にとって大きな推進力となっており、特に限定性のある商品や日本文化を反映した商品が人気を集めている。例えば、近年コーヒートレンドが続いた後、現在は 抹茶が新たなブームとして台頭している。同氏は、お茶・コーヒー・ヘルシードリンクのカテゴリーは今後も継続的に成長すると見ており、消費者の間では「甘さ控えめ」「低糖」「無糖」を選ぶ行動が増えていると指摘する。健康志向の高まりが一層明確になっており、このトレンドは来年も間違いなく拡大すると予測されている。
「心の充電」を満たすコレクション熱とキャラクター商品
一方、消費者行動には新たな興味深いトレンドが生まれている。それが 「コレクションブーム」と「キャラクターコラボ商品」の拡大である。これらは現代の消費者層の間で存在感を増しており、ポップカルチャーの流行や「心が癒される」感覚を求める収集習慣と合致して人気が高まっている。Dentsuが2024年10月から2025年3月にかけて、10か国・8,600人を対象に実施した調査によると、タイでは週に1回以上アニメを視聴する人が全体の59%にものぼり、日本(40%)を上回る数字を記録している。こうしたこともキャラクターを好む消費者行動に結びついているかもしれない。コレクション系アイテムや、小さな幸せを感じさせる活動は依然として強い支持を得ており、人々の 「心の充電」 というニーズに応える形で、今年だけでなく来年もさらに拡大していくと見られている。
Thansettakij.2025.11.22











