2026.07.10
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タイのアイスクリーム市場が成長を継続ー健康志向と価格競争が新たな市場を形成

タイのアイスクリーム市場が成長を継続ー健康志向と価格競争が新たな市場を形成

Image AI-generated illustration.

タイのアイスクリーム市場が拡大を続けている。年間を通じて高温な気候に加え、観光業の回復や消費者ニーズの多様化を背景に、市場規模は拡大傾向にある。タイはアジア最大のアイスクリーム輸出国でもあり、国内消費市場と輸出市場の双方で成長を遂げている。

タイのアイスクリーム市場の歴史

タイにアイスクリームが伝わったのは19世紀後半とされる。当初は輸入した氷を使用する高級品であり、王族や富裕層を中心に楽しまれていた。その後、20世紀初頭に製氷技術が普及すると一般市民にも広がり、ココナッツミルクを使った「アイスクリーム・ガティ」がタイ独自のアイスクリームとして定着した。

1980年代以降は、イギリスのWall’sやスイスのNestléなどの大手メーカーの参入や小売業の発展により市場が急拡大した。さらに、1990年代以降はアメリカ発のDairy QueenやSwensen’sがショッピングモールを中心に店舗網を拡大し、タイにおけるアイスクリームの外食文化の定着を後押しした。2000年代にはプレミアム商品やタイ産フルーツを活用した商品も増加し、近年では健康志向商品や低価格チェーンの台頭により、市場はさらに多様化している。

健康志向商品の需要拡大

近年の市場トレンドとして、健康志向商品の人気が高まっている。消費者の間では、以下の商品の需要が増加している。

・低糖質(Low Sugar)
・乳糖不使用(ラクトースフリー)
・プラントベース(植物由来)

また、マンゴー、ココナッツ、ドリアンなどのタイ産農産物を活用したフレーバーも人気を集めており、「健康」と「タイらしさ」を兼ね備えた商品開発が進んでいる。

世界的にも健康志向の高まりを背景に、アーモンドミルクやピスタチオミルクなど植物由来原料を活用したプラントベースアイスクリームや、糖分を抑えた商品への需要が拡大している。こうしたトレンドはタイ市場にも広がっており、今後の商品開発の重要な方向性となっている。

激化する価格競争

近年、タイのアイスクリーム市場では価格競争が激しくなっている。

特に、中国発のソフトクリームチェーン「Mixue」は、低価格戦略を武器に急速に店舗網を拡大している。2022年のタイ進出以降、若年層を中心に支持を集めており、ソフトクリームを15バーツ前後、レモネードを20バーツ前後という手頃な価格で販売していることが特徴である。2025年時点ではタイ国内で600店舗以上を展開しており、地方都市への出店も進めている。

一方、米国発の「Dairy Queen」は、タイで長年にわたり高い知名度を維持している。ソフトクリームは15~25バーツ程度、看板商品の「Blizzard」は40~80バーツ程度で販売されており、品質やブランド力を強みとしている。現在、タイ国内では500店舗以上を展開しており、ショッピングモールを中心に幅広い顧客層を獲得している。

このように、タイのアイスクリーム市場では、低価格を武器とするMixueと、ブランド力や商品開発力を強みとするDairy Queenが競争を繰り広げており、各社とも新商品の投入や販促活動を強化している。特に若年層を中心に価格への感度が高まっていることから、今後も価格競争は続くとみられる。

タイブランドによる差別化戦略

価格競争が進む中、タイ企業は独自性を活かした差別化を図っている。

ココナッツ製品で知られる「Chaokoh(チャオコ)」は、タイ伝統のココナッツアイスクリームを活用したフランチャイズ事業を展開している。タイならではの食材や伝統的な味を活かした商品は、観光客や健康志向の消費者からも注目されており、競争力向上につながっている。

また、近年はタイの文化や伝統医学を取り入れた商品開発も進んでいる。その代表例が、バンコクの有名寺院「ワット・ポー(Wat Pho)」が監修するハーブアイスクリームである。タイ伝統医療の知識を活用し、バタフライピー、パンダンリーフ、ジンジャー、タマリンドなどのハーブや天然素材を使用したフレーバーを展開している。健康志向の高まりに加え、「タイらしい体験」を求める観光客からも人気を集めており、文化資源を活用した高付加価値商品の成功事例として注目されている。

このように、タイのアイスクリーム市場では価格競争だけでなく、伝統文化や地域資源を活用した差別化戦略も進んでおり、各社は独自のブランド価値の創出を目指している。

輸出市場で存在感を高めるタイ

タイは現在、アジア最大のアイスクリーム輸出国であり、世界でも有数の輸出国となっている。

タイ商務省貿易政策戦略事務局(TPSO)によると、2023年のアイスクリーム輸出額は1億4,821万米ドル(約51億バーツ)となり、前年比7.3%増加した。また、2017~2023年の年平均成長率(CAGR)は12.43%に達している。

世界のアイスクリーム輸出国ランキングでは、タイは第11位となっているが、アジアでは首位であり、EU、米国、英国に次ぐ世界第4位の輸出地域として存在感を示している。

主な輸出先は、マレーシア(29.5%)、韓国(11.3%)、ベトナム(9.5%)、シンガポール(6.5%)、カンボジア(6.3%)であり、ASEANおよび東アジア市場が輸出をけん引している。

タイの競争力の背景には、ココナッツやマンゴーなど豊富な農産物、高度な食品加工技術、そしてFTA(自由貿易協定)を活用した輸出戦略がある。特にドリアン、ココナッツ、タイティーなどタイらしいフレーバーは海外市場でも人気を集めている。

健康志向とサステナビリティが新たな成長要因に

Euromonitor Internationalによると、2023年の世界アイスクリーム市場の小売規模は867億ドルを超え、前年比8.8%拡大した。タイ市場も約3億9,600万ドル規模となり、前年比11%成長している。

近年、消費者は健康だけでなく環境への配慮も重視するようになっている。そのため、大手メーカーでは環境負荷の少ない冷凍設備の導入や、プラスチック包装から紙製包装への切り替えなど、持続可能性(Sustainability)を意識した取り組みが進んでいる。

こうした取り組みは企業イメージ向上だけでなく、新たな消費者層の獲得にもつながっており、今後の競争力を左右する重要な要素となっている。

コールドチェーン技術が輸出競争力を支える

タイのアイスクリーム輸出拡大を支えている要因の一つが、コールドチェーン(低温物流)技術の発展である。アイスクリームは品質維持のため、製造から保管、輸送、販売まで一貫してマイナス18℃以下の温度管理が求められる。

近年、タイでは冷凍倉庫や冷凍コンテナ、温度監視システムへの投資が進んでおり、長距離輸送でも品質を維持できる体制が整備されている。特にレムチャバン港を中心とした輸出インフラの発展により、日本、中国、韓国、ASEAN諸国などへの輸出が拡大している。

また、一部の大手メーカーではIoTを活用した温度管理システムを導入し、輸送中の温度変化をリアルタイムで監視する取り組みも進められている。こうしたコールドチェーン技術の向上が、タイ産アイスクリームの品質と国際競争力を支える重要な要素となっている。

日本企業にとっては、冷凍物流設備、IoT温度監視システム、省エネルギー型冷凍機器などの分野でビジネス機会が期待される。

日本企業にとってのビジネスチャンス

タイのアイスクリーム市場は、健康志向商品の拡大、低価格競争、タイ独自のブランド戦略、そして輸出拡大という複数の成長要因を背景に今後も発展が期待される。

特に、冷凍物流設備、IoT温度監視システム、省エネルギー型冷凍機器、食品加工技術、健康志向向け原材料などの分野では、日本企業にとって新たなビジネス機会が存在すると考えられる。

また、タイ企業によるフルーツやハーブを活用した高付加価値商品の開発は、日本企業との商品開発や技術協力の可能性も秘めており、今後の市場動向が注目される。

 

Sources: Thai PBS, Creative Thailand, Longtunman, Department of International Trade Promotion (DITP), Nestlé Thailand, Euromonitor International, accessed July 2025.

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