2026.06.22
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タイ、AI時代への対応急務ーBitkub創業者が「ASEAN連携によるAI基盤整備」を提言

タイ、AI時代への対応急務ーBitkub創業者が「ASEAN連携によるAI基盤整備」を提言

Image source: Marketing Oops!

AI(人工知能)の急速な発展により、世界経済や産業構造が大きく変化する中、タイが今後どのように競争力を維持していくべきかが重要な課題となっている。Bitkub Capital Group Holdings Co., Ltd.創業者兼CEOのトップ・ジラユット氏は、経済セミナー「AI Revolution Shift 2026」に登壇し、AI時代におけるタイの課題と戦略について講演を行った。

また、トップ・ジラユット氏は、世界経済フォーラム(WEF)が選出する「Young Global Leaders」にも選出されており、タイにおけるブロックチェーン技術およびデジタル資産分野の先駆者として国際的に高く評価されている。Bitkubを通じてデジタル金融エコシステムの発展を牽引してきたほか、タイのデジタル経済・イノベーション産業の成長にも大きな役割を果たしている。

タイ経済、「中所得国の罠」から抜け出せず

トップ氏は、タイ経済が長年「中所得国の罠」に陥っていると指摘した。観光業や従来型産業への依存が依然として強く、AIやデジタル技術を中心とした新産業への転換が十分に進んでいないという。

現在の世界経済では、従来型産業が停滞する一方で、AIやデジタル関連産業が急速に成長しており、「K字型」の経済構造が形成されつつあると説明した。

同氏は、「AIは単なる新技術ではなく、コンピューターやインターネットと同じ『プラットフォームシフト (Platform Shift)』である」と強調した。

AI時代に必要な「5つの基盤」

Note This image was generated using artificial intelligence (AI).

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講演では、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが提唱する「AIの5層構造」にも言及した。

AIを支える5層

第1層 エネルギー (Energy)

第2層 半導体チップ (Computer Chip)

第3層 クラウド (Cloud)

第4層 AIモデル (AI Model)

第5層 AIアプリケーション (AI Application)

トップ氏によると、タイは特に第1〜第3層に課題を抱えている。

電力不足と半導体の弱さ

第1層の「エネルギー」では、AI需要を支える発電能力が十分ではないと指摘した。

第2層の「半導体チップ」については、「タイ版NVIDIA」を生み出すには莫大な投資が必要であり、現実的には非常に難しいと分析した。

クラウド基盤も海外依存

第3層の「クラウド」でも、タイは独自インフラを持たず、海外企業に依存している現状があるという。

「AI」の到来は、単に特定の産業を変える技術というだけではなく、あらゆる産業を変革する「プラットフォームシフト」である。これは、かつてコンピューター、インターネット、スマートフォン、ソーシャルメディアが登場した際に起きた変化と同じであり、人々の行動様式や産業構造を根本から変えてきた。

「振り返れば、最初のプラットフォームシフトはコンピューターでした。40年以上が経過した現在、あらゆる産業でコンピューターが使われています。次に起きた第2のプラットフォームシフトがインターネットであり、20年以上を経た今では、すべての産業・企業がインターネットを利用しています。その後、モバイルフォンやソーシャルメディアもまた、新たなプラットフォームシフトとなりました。

そして今後は、AIが次のプラットフォームシフトになります。あらゆる産業がAIを活用するようになり、そのためには莫大なエネルギー、膨大なコンピューターチップ、そしてクラウドインフラが必要になります。しかし、タイはその「3層の巨大市場」の最初の段階には入っていません。

ただし、タイにも第4層である『AIモデル』、そして第5層である『AIアプリケーション』の分野でチャンスがあります。この1年で世界のAIモデルは大きく進化しており、さらに多様な産業の生産性向上を支援するAIアプリケーションも次々と登場しています。」と、トップ氏は強調した。

ASEAN全体でAIインフラを構築へー「Regional AI Infrastructure」を提案

トップ氏は、AIインフラ整備には莫大な資金が必要なため、タイ単独での実現は難しいと説明。そのため、ASEAN各国が連携し、「Regional AI Infrastructure(地域AIインフラ)」を共同構築する必要があると提案した。

現在、フランスやドイツ、カナダなどではGDPの約10%規模をAIインフラ投資に充てる動きが進んでいる。

一方、タイでは公的債務がGDPの約90%に達しており、大規模投資には制約があるという。

「良い借金」と「悪い借金」

国家としてAIインフラを構築するには莫大な投資が必要となる。一方で、現在タイの公的債務はGDPの約90%に達している。この債務には、「良い借金(Good Debt)」と「悪い借金(Bad Debt)」がある。

「良い借金」とは、国家の長期的成長につながるインフラ整備への投資のための借入を指す。一方、「悪い借金」とは消費のための借入であり、タイの債務の大部分は後者に当たる。つまり、消費目的の借入が中心で、インフラ構築への投資が十分に行われていないという。

海外投資と高度人材の獲得が課題

世界各国では現在、AI企業や高度人材を呼び込む競争が激化している。

カナダでは税制優遇を実施し、EUでも企業活動を容易にする制度改革が進められている。

一方、タイには観光資源や食文化などの魅力はあるものの、AI・テクノロジー産業を引き寄せる競争力はまだ十分ではないという。

トップ氏は、「投資と人材を呼び込むためには、政策や社会契約を見直す必要がある」と述べた。

AI税・ロボット税導入を提案ーAIによる雇用変化を懸念

トップ氏は、今後5年以内に世界の仕事の約40%がAIに代替される可能性があると指摘した。

その結果、労働所得が減少し、従来の税収構造も維持できなくなる恐れがあるという。

そのため同氏は、

  • AI税(AI Tax)
  • ロボット税(Robotic Tax)

など、人間の労働に依存しない新たな税制「Automatic Tax」の導入を提案した。

得られた税収は、国民のリスキリング(再教育)やアップスキリング(技能向上)に再投資すべきだと述べた。

政府系資産ファンド設立も提言

同氏はさらに、国家が長期的な投資収益を確保するため、「Sovereign Wealth Fund(政府系資産ファンド)」の創設も必要だと主張した。

シンガポールのTemasekやノルウェー政府年金基金などを例に挙げ、「今後は労働所得よりも投資収益の重要性が高まる」と説明した。

米中AI競争の中でタイはどう動くべきかーASEAN連携を重視

AI時代では、アメリカと中国の覇権争いがさらに激化すると予測されている。

トップ氏は、タイは特定の大国に偏るべきではなく、ASEANとの連携を強化すべきだと強調した。

同氏は、かつての世界を「大きなジャングル」に例え、アメリカを「ジャングルの王であるライオン」に、中国を「当時はルールに従って行動していたトラ」に、そしてタイを「ニワトリ」にたとえた。以前の時代であれば、たとえ大国が不適切な行動を取ったとしても、小国は「良き森の住民」であることを示し、国際ルールの中で生き残ることができたという。

しかし、今後の世界の地政学はそうした構図ではなくなる。これからは「Power Accumulation(権力の蓄積)」の時代となり、各国はエネルギー、石油、AI技術、食料安全保障など、さまざまな分野で力を蓄積していく。そして、ルールよりも力を持つ者がゲームを支配する時代へと移行している。小国が十分な交渉力や切り札を持たないまま大国に逆らえば、大きな影響を受ける可能性があると指摘した。

「食料安全保障」を交渉カードに

また、タイの最大の強みとして「食料安全保障」を挙げた。

農業・食品分野への投資を強化し、外交交渉における重要なカードとして活用すべきだと述べた。

中国の「Physical AI」にも警戒感

中国発のAIを軽視してはならない。多くの人はDigital AIばかりを語るが、一方でPhysical AI、つまりロボット分野でも、中国は現在非常に大きな進歩を遂げている。また、もう一つの大きな課題は、AIが自らを進化させる能力を持ち始めていることだ。数年後には、AIが人間を上回る知的能力を持つ可能性もある。さらに、すでに「ロボットがロボットを作る(Robot build on Robot)」技術の開発も進んでいる。これらは、世界がDigital AIとPhysical AIの両面において、米中間の大規模なAI競争時代へ突入していることを示している。

「AIは世界構造を変える大転換」

トップ氏は最後に、「AIは単なる技術革新ではなく、世界の産業構造そのものを変える巨大な転換点だ」と強調した。

タイが今後も成長を続けるためには、

  • AIインフラ投資
  • 人材育成
  • ASEAN連携
  • 新税制導入
  • 国家投資戦略

など、抜本的な改革が必要だとの認識を示した。

 

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