【後編】タイ、ゲノム編集と民間BioTechが農業を変える―9種類の経済作物から畜産・食品まで、スタートアップと日本企業の商機―
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タイでは2026年、ゲノム編集を活用した農業研究が実用化を見据えた段階へ進みつつある。気候変動への対応、生産性向上だけでなく、品質や栄養価など農産物の付加価値を高める技術としても期待されている。
ゲノム編集、9種類の経済作物で研究を推進
タイ農業局は農業研究開発庁と共同で「GEd Innovation Showcase 2026」を開催し、ゲノム編集を活用した植物研究の初年度成果を発表した。
研究には、タイ農業局、カセサート大学、タイ国立遺伝子生命工学研究センター(BIOTEC)の研究者が参加し、それぞれの専門分野を生かした連携体制で進められている。研究対象は、コメ、サトウキビ、キャッサバ、飼料用トウモロコシ、大豆、トマト、パパイヤ、スエヒロタケ、フクロタケの9種類で、タイを代表する経済作物に加え、高付加価値化が期待される作物・食用キノコまで幅広い。
研究テーマも多岐にわたり、干ばつ、洪水、塩害、高温、病害虫への耐性強化や、栄養価・品質の向上などが進められている。例えば、サトウキビでは塩害への耐性、トマトでは高温環境への適応や品質向上などが研究されており、気候変動への対応と農産物の高付加価値化の両面でゲノム編集技術の活用が期待されている。
規制整備と研究ネットワークも並行
タイ農業局は2024年から、GEd作物の規制基準整備、主要経済作物の研究開発、政府・民間・海外研究機関を結ぶ「Science-Bio Consortium」の構築を進めている。日本との技術交流もあり、農業研究開発庁は筑波大学の専門家を招き、GEdを活用した高GABAトマトの事例を共有した。
GEdによって病害や環境変化に強い品種の開発が進めば、農薬などの投入削減や農家の生産コスト低減につながる可能性がある。一方で、実用化には安全性評価、規制、消費者理解、市場受容性なども重要になる。
民間企業でも広がるBioTech活用
こうしたBioTechの活用は公的研究機関だけでなく、タイの大手食品・農畜産企業にも広がっている。BetagroはBioTechを重点研究分野とし、Genomic Selection(ゲノム選抜)、NGS(次世代シーケンシング)、Genome Editing(ゲノム編集)、マイクロバイオーム、プロバイオティクス、迅速診断技術などを研究している。家畜の品種改良や疾病抵抗性、生産効率の向上につなげることを目指している。
CP Groupも「CP Innovation Center of Excellence」にバイオテクノロジー研究所を設置し、栄養・食品オミクス、マイクロバイオーム・DNA解析、DNA・RNA・代謝物分析、精密栄養、代替原料などを研究している。海外企業や大学との共同研究環境も整備しており、BioTechの対象は植物育種だけでなく、畜産、飼料、食品、診断・健康分野へ広がっている。
スタートアップ・SMEに広がる4つの商機
第一は、新品種・高機能農産物の事業化である。耐暑、耐乾燥、耐病性、高栄養価などの特徴を持つ農産物を、食品メーカーや輸出企業と連携して市場化する余地がある。
第二は、バイオ製品・素材の開発である。サトウキビ、キャッサバ、パーム油、農業残渣などを、機能性食品原料、化粧品原料、バイオ化学品、バイオプラスチックなどへ転換する分野である。
第三は、研究成果の事業化支援である。大学やBIOTECなどの技術を活用し、量産化、品質管理、マーケティング、輸出を担うビジネスモデルが考えられる。第四は、BioTechとデジタル技術の融合で、GEd品種に農場モニタリング、栽培データ解析、AI、Precision Agricultureを組み合わせるサービスなどが想定される。
日本企業には研究・技術連携の余地
日本企業との接点は、植物育種、食品・機能性成分、バイオ化学、農業資材、精密農業、畜産技術など幅広い。タイ側の農業資源や実証フィールドと、日本側の研究技術、品質管理、加工・製造ノウハウを組み合わせることで、共同研究から商品化までの連携が期待できる。
タイでBioTechが研究室から農場、畜産現場、食品産業へと広がる中、スタートアップやSMEに求められるのは技術そのものだけではない。農薬費や飼料費の削減、収量・品質の向上、販売価格の上昇など、導入効果を経済価値として示せるかが事業拡大の鍵となる。
Sources(リンク先の情報はタイ語または英語で掲載されています。)
- ThaiCh8, “Report on Thailand’s Development of Economic Crops Using Genome Editing Technology (GEd Innovation Showcase 2026)”
https://www.thaich8.com/news_detail/144595 - Department of Agriculture, Thailand, “Genome Editing economic crops – official Facebook post”
https://www.facebook.com/doa.thaidoa/posts/1523396689820368/ - Betagro Public Company Limited, “Research and Development Center (RDC)”
https://www.betagro.com/en/innovation-and-quality-management/research-and-development/research-and-development-center - Charoen Pokphand Group (CP Group), “CP Innovation Center of Excellence”
https://www.cpgroupglobal.com/en/innovation/cp-innovation-center-of-excellence
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